試験研究用試薬とは?市場の特徴:試薬のコンサルティング・ビジネスサポート

試験研究用試薬とは?市場の特徴

試験研究用試薬とは、研究および試験を目的に使用される薬品類の総称です。

本記事では、試験研究用試薬の市場のユーザー、プレーヤー、販売方式、法規制を紹介します。

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試験研究用試薬とは?:研究と試験を目的とした薬品類の総称

試験研究用試薬とは?:研究と試験を目的とした薬品類の総称

試薬の用途

試験研究用試薬とは、主に科学研究や試験・分析に使用される化学物質や薬剤がセットになったキットなどのことを指します。

医薬品や化学薬品の開発、環境分析、食品分析など幅広い分野で利用されています。

なお、試験研究用試薬と研究用試薬は同じ意味で使用されます。

詳細な試薬の用途例は最後に紹介しています。

試験研究用試薬と体外用診断薬(体外診断用医薬品)の違い

単に試薬という場合、試験研究用試薬と体外診断薬どちらもが含まれることがあります。しかし、この2つはまったく異なります。

以下に「試験研究用試薬」と「体外診断薬」の違いを表にまとめました。

項目試験研究用試薬体外診断薬
目的研究や試験分析健康診断や疾患の診断
主な使用者メーカー、大学、研究機関病院、検査会社
法規制・試験研究用試薬用の法規制はない
・物質としての規制がある(毒物及び劇物取締法など)
医薬品医療機器等法(薬機法)
審査・承認なし。一部に認証を受けている販売されている製品がある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査がある。最終的には厚生労働省の認証・承認が必要(製品によっては届出のみ)
有機合成用化合物、溶媒、細胞用培地、遺伝子抽出試薬血糖値測定試薬、HIV検査キット、インフルエンザ検査薬
価格一般的に体外診断薬より安価保険適用製品は薬価が定められている
代表的な業界団体日本試薬協会日本臨床検査薬協会

箱やラベルに以下の表示がされます。
試験研究用試薬:研究用試薬、Research Use Only(RUO)
体外診断薬:体外診断用医薬品、In Vitro Diagnostics(IVD)

一番の違いは用途です。

試験研究用試薬は、製品の品質試験や科学研究のために使用されます。一方、体外診断薬は診断のために使用されます。

試験研究用試薬もヒトの検体(血液や尿など)に使用することはありますが、あくまで研究が目的であり、その結果で診断されることは原則ありません。

試験研究用試薬の顧客(ユーザー)はアカデミアと民間企業

試験研究用試薬の顧客(ユーザー)はアカデミアと民間企業

試験研究用試薬の利用者は、アカデミアと民間企業に分けられます。分ける理由は顧客数と客単価が異なるからです。

アカデミア

アカデミアとは学術研究や公的な調査を目的とした機関です。

  • 大学の研究室(国公立、私立どちらも)
  • 公的研究機関(例:理化学研究所、産業技術総合研究所)
  • 公的分析機関(食品や水質分析機関など)

大学の数がとても多いため、顧客数はアカデミアが多いです。

民間企業

主に製造業の研究所、品質管理部門、製造部門が民間企業の顧客です。

具体的には、製薬企業、受託研究機関(CRO)、化学メーカー、食品メーカー、環境分析企業です。特に、大手のメーカーは研究開発の予算が大きいため重要顧客です。

製品の製造原料として試薬が使用される場合もあります。

アカデミアほど顧客数は多くありませんが、客単価は高くなる傾向があります。

試験研究用試薬の顧客は業界慣習としてユーザーと呼ばれることが多いです。

試験研究用試薬市場のプレーヤー

試験研究用試薬市場のプレーヤー

日本国内の試薬市場おける主要な試薬メーカーを紹介します。

メーカー名本社所在地主な取扱製品
Thermo Fisher Scientific🇺🇸 アメリカ遺伝子解析、抗体、細胞培養、分子生物学試薬
Merck KGaA/ Sigma-Aldrich🇩🇪 ドイツ有機・無機化学試薬、培地、抗体
Bio-Rad Laboratories🇺🇸 アメリカPCR、ELISA試薬、プロテオミクス
QIAGEN(キアゲン)🇩🇪 ドイツ/オランダDNA・RNA抽出試薬、NGS関連試薬
PerkinElmer🇺🇸 アメリカELISA、蛍光試薬、ハイスループットスクリーニング
Roche Diagnostics🇨🇭 スイスPCR試薬、抗体、遺伝子診断試薬
Agilent Technologies(🇺🇸 アメリカクロマトグラフィー試薬、質量分析試薬
Abcam🇬🇧 イギリス抗体、タンパク質試薬
Cytiva🇺🇸 アメリカ精製試薬、抗体、細胞培養試薬
BD Biosciences🇺🇸 アメリカフローサイトメトリー試薬、免疫学試薬
富士フイルム和光純薬🇯🇵 日本試薬全般
タカラバイオ🇯🇵 日本PCR試薬、遺伝子解析試薬、NGS試薬
東ソー(Tosoh Bioscience)🇯🇵 日本免疫測定試薬、クロマトグラフィー試薬
東洋紡🇯🇵 日本遺伝子解析試薬
関東化学🇯🇵 日本有機・無機試薬、環境分析試薬
東京化成🇯🇵 日本有機・無機試薬
ナカライテスク🇯🇵 日本試薬全般

試験研究用試薬の販売方法:販売代理店制度

試験研究用試薬は販売代理店を経由してエンドユーザーへ販売されます。

一部のメーカーはエンドユーザーへ直接販売をしていますが、試薬業界では一般的な販売方法ではありません。

試薬メーカーは、下図のパターンAおよびBのどちらかの販売方法を採っています。

試薬の主要な販売パターン2種類

各都道府県の販売代理店と記載していますが、大手の販売代理店は複数の県にまたがって販売しています。

パターンA:総代理店と販売契約を結ぶ

総代理店とは、全国各地に卸先の代理店を持つ代理店です。親代理店とも言います。

パターンAは、メーカーが総代理店と販売契約を結び、総代理店の販売網を使って試薬を販売する方法です。

取引先が総代理店1社になるため、コミュニケーションを取りやすく、集金など管理も容易です。

まず試薬メーカーが総代理店(一次店)に納品し、総代理店から各地方の代理店(二次店)に納品した後、各地方の代理店(二次店)がエンドユーザーへ納品します。場合によってはさらに三次店が存在します。

総代理店の物流をそのまま使えるため、流通網を整備する必要がありません。

ただし、総代理店が間に入ることで、販売で得られる利益は少なくなります。

新規参入のメーカーや試薬事業が主事業でないメーカーはこの方式を採用します。

【パターンAのメリット】
・取引先が1社になるため売買がスムーズ
・納品先はすべて総代理店になるため物流コストが低い(1か所への一括輸送)
・総代理店の販売網を使えるため、販売網の構築が不要

パターンB:各地方の販売代理店と直接販売契約を結ぶ

パターンBは、総代理店を使わず、各都道府県の販売代理店と取引します。

各地方の販売代理店はエンドユーザーの情報を多くもっているため、試薬ユーザーの声や反応を吸い上げやすいです。

また、総代理店がいないため、製品の利益は高くなります。

一方、取引先が多くなるため、物流や営業活動のコストは高くなります。

始めからパターンBの販売形式を採用する試薬メーカーは少なく、パターンAから始めて売上が安定したタイミングでパターンBに切り替えること多いです。

【パターンBのメリット】
・エンドユーザーからの情報を得やすい
・総代理店がないためメーカーが得られる利益が多い

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試験研究用試薬が対象となる法規制

試験研究用試薬が対象となる法規制

試薬を製造、販売する際に確認すべき法規制の例を紹介します。

試薬は製品に含まれる物質によって、ラベルやSDS(安全データシート)に安全性や法規制情報を明記しなければなりません。

化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)

有害化学物質を含む研究用試薬の製造・輸入・販売を規制する法律。

労働安全衛生法(安衛法)

特定化学物質(発がん性・毒性のある試薬)の取り扱い基準を定める法律。
SDS(安全データシート)の作成・提供が義務付けられる。

毒物及び劇物取締法(毒劇法)

毒物・劇物を含む試薬の製造・販売・管理を規制。
一定量以上の「毒物」や「劇物」を含む試薬の販売には販売業者の登録が必要。

消防法

危険物(可燃性・爆発性・反応性のある化学物質)の取り扱いを規制。
貯蔵量に応じて、許可・届出・消防設備の設置が必要。

PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)

化学物質の排出管理を規制。
特定の化学物質(例:ダイオキシン類、ベンゼン)を扱う場合、排出量を報告する義務がある。

REACH規則(EUの化学物質規制)

EU向けに試薬を輸出する場合、REACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限)が適用される。
一定量以上の化学物質を含む試薬は、事前登録が必要。

カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律)

遺伝子組換え生物などを使用する研究用試薬や遺伝子を組換えたサンプルに適用。
例:遺伝子組換え細胞、ウイルスベクター

GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)

化学品の危険有害性を統一的に分類し、ラベルや安全データシート(SDS)で適切に表示する国際的な枠組み。

ここで挙げた法律や規制がすべてではありませんのでご注意ください。

試薬ビジネスにおけるコンサルティング会社の重要性

試薬ビジネスにおけるコンサルティングの重要性

市場規模・データの不足

研究用試薬市場の詳細な市場規模データは公表されていないことが多いです。

医薬品市場は市場規模が大きく、民間調査会社や公的機関の調査データがありますが、試薬市場の詳細な分析レポートはありません。

海外や一部の国内調査会社がレポートを販売していますが、各データの根拠が非常に乏しい上、個々の製品の市場に関するデータはほぼありません。

各社はリサーチ会社やコンサルティング会社と協力しながら独自に市場調査を行います。

商流の複雑さ

代理店経由の流通が主流でメーカーが情報を得られにくい

試薬メーカーの多くは代理店経由で販売しており、メーカー自身がエンドユーザーの購買データを把握していないケースも少なくありません。

また、地域によって販売代理店が三次店、四次店とある場合もあり、誰も商流全体を把握していないこともあります。

メーカー兼販売代理店

“メーカー機能と販売代理店機能”を併せ持つ会社が複数存在します。

メーカーとして自社製品を製造販売しつつも、代理店として他社製品を販売する会社です。

試薬業界においては、このような会社は珍しくなく、業界に詳しくなければメーカーと代理店が区別できません。

確認すべき法規制の多さ

各国ごとに異なる規制

日本では、労働安全衛生法、化審法、毒劇法などが試薬に関する法規制としてがあります。

一方で、他国では異なる法律が適用されるため、販売先に合わせた規制対応が求められます。

対応すべき法規制が多い

試薬が該当しやすい法規制を紹介しました。しかし、化合物や生体由来成分に関する規制は多く、試薬メーカーが実際に製品を販売する際はもっと多くの法規制を事前に確認しています。

特に、規制対象物質は年々追加されるため、試薬に含まれる成分を常に管理し、最新の法規制に対応させなければなりません。

研究トレンドの見えにくさ

研究領域によって試薬の需要変動があります。今後盛んになりそうな研究分野を分析し、その市場を狙って試薬を開発します。

また、各国の政府や民間企業の研究費の増減が売上に直結するため、政策動向にも注意が必要です。

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試験研究用試薬が利用される分野の詳細

研究用試薬が利用される分野の詳細

研究用試薬の用途は非常に幅広く、科学研究や産業分野での研究・試験に不可欠な役割を果たしています。

以下に代表的な用途を挙げます。

基礎研究

  • 分子生物学
    DNA/RNA抽出、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、遺伝子編集(CRISPR-Cas9)など。
    核酸やタンパク質の構造や機能解析。
  • 細胞生物学
    細胞培養用の培地や成長因子、染色試薬。
    細胞分裂や分化のメカニズム研究。
  • 化学合成
    触媒研究、新規分子の合成や反応経路の解析。

医薬品開発

  • 創薬研究
    ターゲット分子の探索やスクリーニング試験(HTS: High Throughput Screening)。
    化合物ライブラリの試験。
  • 薬効・毒性評価
    前臨床試験での薬効確認。
    安全性試験用の動物試験試薬や細胞アッセイ。
  • 製剤研究
    安定性試験、溶解性試験。
  • 再生医療研究
    iPS細胞や間葉系幹細胞(MSC)など幹細胞の培養・分化試験。
    細胞治療の研究。

環境分析

  • 水質・土壌検査
    水中の有害物質(重金属、農薬)の検出。
    土壌中の成分分析。
  • 大気汚染の検査
    NOx、SOx、PM2.5の分析。
    ガス吸収試薬や標準ガスの使用。
  • 廃棄物管理
    廃水中の化学物質や有機汚染物の特定。

食品・農業分野

  • 食品検査
    食品中のアレルゲンや微生物検出。
    保存料や農薬残留物の分析。
  • 農業研究
    植物の栄養素や土壌改良剤の効果測定。
    遺伝子組み換え作物の特性研究。

体外診断薬の開発

  • 血液や尿の分析試薬(酵素や抗体を含む)の開発。
  • バイオマーカーの研究。

材料科学

  • ナノ材料の開発
    新規材料やナノ粒子の合成試験。
  • 高分子化合物の研究
    ポリマーや樹脂の物性評価。
  • 半導体・電子材料
    特定の材料成分の分析やプロセス開発。

教育・トレーニング

  • 大学や高校での学生向け科学実験
  • 科学イベント

法科学・犯罪捜査

  • 法医学分析
    DNA鑑定や血液、唾液の痕跡検出。
  • 毒物や薬物検査
    犯罪現場での薬物分析。

エネルギー・産業分野

  • バイオエネルギー研究
    バイオマスからの燃料生成における酵素や触媒の利用。
  • 石油・ガス分野
    原油や精製品中の成分分析。